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私は照れながら、話し掛けた。
「あはは…ついに市役所から通知きちゃいましたよ」
「えっ?」
何言ってんだろ私は。
永田さんは、私の急な問い掛けに困惑気味。
なのに、私は話を聞いて貰いたくて。
少しでも、永田さんの側に居たくて、また話し掛ける。
「ほら、住民票の手続き、実はまだ済ませてないもんだから…」
私は封書を握り締め俯いた。
「あぁ、そう言えば」
私の手元を永田さんは一瞬見る。
「相変わらずこんなだから、喧嘩ばかり。本当にうるさくて、ご迷惑でしょ?いつも申し訳ありません」
怒鳴り合い。
それから、激しい物音。
騒音が気になる。
だなんて、よくも私は自分の口から言えたものだ。
うちが一番、うるさい。
「…いえ、そんな事はねぇ。やっぱり他人同士が一つの場所に居るんだから。色々有りますよ。そんな事はお互い様ですって」
本当はそんなふうに微塵も思っていないのに、さらっと私を安心させるために、偽りのないような言い方をしてくれている。
同じ嘘でも、こっちの方がよっぽど思いやりのある嘘だよ。
だから、ほら。
優しさに、久しぶりに触れて…。
ダメだ、私…。
泣いちゃいそうだよ。
「結局、私は一人暮らしおろか、許可無く、この街に住んでるみたいで…虚しいし、日々後ろめたい心境でいっぱい…」
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