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「今は僕も、妻が戻るまでは独り暮らしみたいなもんなんで。意外と独りも気楽なもんで、いいですよ?」
そっか…そうだよね。
独身は自由だもの。
「戻って来たら、それこそ今の気楽で自由な生活は出来ませんから。きっと毎日大忙しで、嵐のように1日が終わっちゃいますよ」
永田さんはそう言いながらも、嬉しそうに、これからの事を語るから…。
私は胸がギュッと苦しくなった。
この人の口から。
妻や子だなんて、聞きたくない。
一瞬だけ、笑顔で返すのが正直キツかった。
タバコを吹かして、黙ってしまう私に永田さんは気が付く。
「…?どうしたんですか?」
「あっ、いえ。えっと、永田さんの言う通り、そう思うように心掛けます」
「対したアドバイスしか、出来ないですけどねぇ」
「全然、とんでもないです」
私はうまく誤魔化した。
またタバコを吹かして、昼中の静けさと心地よい春の風に吹かれ。
私と永田さんは、二人で佇んでいた。
タバコを吸い終わって、
「すいません、なんだかタバコ吸うのに、付き合わせちゃったみたいで、申し訳ない」
「そんな事ないです。こっちこそ、一方的に話し掛けてしまって、邪魔してごめんなさい」
「いいえ、邪魔だなんて全く思ってませんよ」
目線を合わせて言われて。
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