6 独身は自由

7/8
前へ
/322ページ
次へ
「今は僕も、妻が戻るまでは独り暮らしみたいなもんなんで。意外と独りも気楽なもんで、いいですよ?」 そっか…そうだよね。 独身は自由だもの。 「戻って来たら、それこそ今の気楽で自由な生活は出来ませんから。きっと毎日大忙しで、嵐のように1日が終わっちゃいますよ」 永田さんはそう言いながらも、嬉しそうに、これからの事を語るから…。 私は胸がギュッと苦しくなった。 この人の口から。 妻や子だなんて、聞きたくない。 一瞬だけ、笑顔で返すのが正直キツかった。 タバコを吹かして、黙ってしまう私に永田さんは気が付く。 「…?どうしたんですか?」 「あっ、いえ。えっと、永田さんの言う通り、そう思うように心掛けます」 「対したアドバイスしか、出来ないですけどねぇ」 「全然、とんでもないです」 私はうまく誤魔化した。 またタバコを吹かして、昼中の静けさと心地よい春の風に吹かれ。 私と永田さんは、二人で佇んでいた。 タバコを吸い終わって、 「すいません、なんだかタバコ吸うのに、付き合わせちゃったみたいで、申し訳ない」 「そんな事ないです。こっちこそ、一方的に話し掛けてしまって、邪魔してごめんなさい」 「いいえ、邪魔だなんて全く思ってませんよ」 目線を合わせて言われて。
/322ページ

最初のコメントを投稿しよう!

250人が本棚に入れています
本棚に追加