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……。
あれっ、なんで…。
なんで、まだ私を見てるんだろう…。
距離の有る場所にも関わらず、彼の視線をまだ感じる。
まるでわざと目を合わせるために、私を見続けているように思えた。
私は思いきって視線をそらして、また2、3歩だけ足を進ませた。
でも、もう一度だけ振り返って見ると。
その男はやっぱりまだ、私だけを見ていた。
目を薄めて見つめていたのだ。
キュッ…
心臓が少しだけ縮んで、胸が痛くなった。
なんだろう…この感覚って…もしかして…。
彼がどうして、私を見続けているのか知りたくなった。
というよりも、私の足が自然とまたアパートの方へと進んでいたのだ。
私の戻って来る様子を、男はタバコの煙を吹きつけて、
やっぱりな…。
って、顔をして、ニヤリとまた少しだけ口元を緩ませ、タバコの火を消した。
その瞬間から、スローモーションのような時間が流れはじめた。
吸い込まれるような。
引き寄せられるような。
こんな感覚、始めて…。
そんな運命を感じた出逢いだった。
私の足取りは軽く。
だけども、どうしてあんな場所で、こんな日中に居るのかが、不思議に思えたんだけど。
あの人が私たちの部屋の真下に住む、101号室の住人?
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