第6章

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「こちらの部屋に。野々宮様、ここから絶対にお出にならないようお願いいたします」 「状況が分かりましたらすぐに連絡してください。怪我の手当ても急いで。」 野々宮達生徒会にも何かしらペナルティとかなるのかな?ただの引っ掻き傷で済ませてもらえないかな? 「確認して参ります」 スタッフは野々宮にそう告げると俺の腕を振り落とすようにして出ていった。 「った」 ちょっ!痛ってぇ。 野々宮と俺に対する扱い差がありすぎない? あーもう、ハンカチほどけかかってるし… 変な違和感を感じながら、通された部屋を見渡せば、素人でもわかるアンティークの机と椅子が中央におかれ、その後ろには立派な暖炉。 こんな所に血でも付けたら絶対取り返しつかない。ここ、学生が使っていいようなおうちじゃないでしょ! 「青井…痛いよね。」 弱々しい声と共に、野々宮にそっと持ち上げられられた腕はさっきより熱く重い気がする。 うわっ反対の手と借りた腕時計までベットリ血がついてるじゃん。 「どっ…したの?え?何この血っ!うそっ…こっちまで。どうしてこんな!健太朗死なないで!」 急に…どうしたのって野々宮の方だろ!さっきまで落ち着いた冷静な声で対応してただろ? しかも何かパニック起こしてない? ハンカチまた汚れて来ては要るけど…多分死ぬほど出てないし。 とりあえずどうやって死なないっていうか…落ち付かせよう。 …頭撫でる?けどこんな手であの綺麗な髪に触れるなんて絶対汚しちゃダメだろ。 どうする? 「死なないから。多分この手は押さえたときに付いただけ。そんなに痛くないから。大丈夫だよ。」 「本当?」 一度深呼吸をしてゆっくり話しかけると、目尻に涙をためた上目遣いの………… ヤバい不謹慎だけど…俺のためにこんな慌てるなんて、ちょっと…いや、かなり嬉しい。 てか、野々宮の方が顔真っ青で倒れそうじゃないか? 「本当。でも、時計借り物で…外したほうがいいかな?」 相談しただけのはずなのに野々宮に時計を手早く外され、そのうえ大事そうに自分のハンカチに包んでくれた。 「…ありがとう。でもハンカチ汚れ」 「ハンカチは汚れるものだから気にしないで!」 え??今度は怒ってる?だってそんな血ってなかなか落ちないよ? 下を向いたまま時計を両手に握りしめ、怒りで震えてると思えば― 「…っ…ひっく」 泣かせてしまった。 「…ごめん。俺のせいでイベント」 「違う!そんなの…どうでも…っいいよっ。きっとっ…これは…僕のせい」 そう言いながら何故か胸元に抱きついてきた。 何これ可愛い!シャツをギュッて片手で掴んでるんだけど。 「僕のせいって?これは1年を庇った時だし、野々宮は関係ないよ。大事なイベントに騒ぎおこしてごめん。」 しかし野々宮は下を向いたまま首を振って否定してくる。 やべ、普通なら男が女々しくなるなって思うとこだけど…男だけど…同級生だけど。 俺のために泣いてくれるって、庇護欲が溢れそう。 落ち着くように怪我のない腕で背中を擦ってあげると、今度は背中に腕が回ってきて― え?ちょっ、抱きしめられた? …野々宮?もしかして結構落ち込んでる? 「守ってあげれなくて、怪我させてごめんね。」 え?守る?俺を?野々宮が? …って個人じゃなくて生徒会としてだよな? やっぱり反省点になって処罰とかあんのかな?だとしたら、泣いてくれたりして逆に申し訳ない。 「大丈夫。すぐ治るよ。だから泣き止んで。」 正直なとこ、傷がさっきより段々と痛くなってきたんだけど、言った以上は弱音はけないし、また泣きそうだし…そんな姿見せたくないな。 痛みと、どうやって野々宮を落ち着かせるかで悩んでいると、ドアがノックされお互い慌てて離れ野々宮は急いで涙をふいていた。 「道具とお茶をお持ちしました」 そう言いながら2人のスタッフが室内に入って来ると、1人は俺の怪我を見るのか道具をもって、もう1人はまた高そうな紅茶セットをテーブルに置き、ソファに座るように促してくれた。 「会場は落ち着いてイベントは続いています。お二人のチームは、治療の間ここのイベントをされていますので、棄権の心配はございません。」 最初に案内してくれたスタッフが、立ったままの野々宮にそう説明しているなか、俺はもう1人にソファに連れていかれた。 よかったぁ。都筑先輩達に後で謝りにいかないとな。 マントを被ったままだか、スタッフの言葉に安心して「ありがとうございます」とお礼を言うと、スタッフは手袋を素早くはめて手当てを始めてくれた。 治療しながらもマントって、かなり本格的に対応するなぁ… 痛みが少し無くなって…あれ?眠っ―
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