第1章 愛とは時に悲しく…幸せで…前編

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一方…弥の部屋には玲奈が向かっていた。 〝うふふ…これを持って行ったら弥、びっくりするだろうなぁ〟 驚く弥の表情を想像するだけで、足取りは軽くほおが緩む。 そして、弥の部屋の前に立つと気持ちを整えるかの様に咳払いを一つし、扉を二つノックした。 「はいよっ。」 弥の声だ。 玲奈は少し緊張気味に息を飲むと扉に手をかけ一気に開く。 「どうした?ルーンブレードよ。」 弥はベッドに寝転びながら外を見つめ、何かを考えている様に見える。 だが、今の玲奈にとってそれどころの心境では無かった。 予想以上に恥ずかしい。 〝もし…不味いなんて言われたらどうしよう〟 などと不安までよぎって来る。 玲奈はベッドの脇に設置された台にオボンごとおにぎりを置くとホワイトボードに書き、弥に向けた。 (おにぎり作って来たから食べなさいよ!) 〝あっ!?〟 緊張のせいかホワイトボードを持つ手が震え、うっかり落としてしまった。 慌てて拾い上げようとするも、音に気がついた弥が先に拾い上げると内容を読み驚いていた。 「ん?おぉ??どういう風の吹き回しだ!ルーンブレードよ! 爺さんに言われて来たのか?」 (違うわよ……。私が作ってきたの……ほらっ。ご飯が余っちゃうじゃない。 勿体無いし…食べなさいよ!) 自分でも信じられないほどツンケンしている自覚はある。 だが、制御出来ない。 そんな感情にやきもきしながらも後で後悔するであろうこの状況に流されるしか無かった。 「………。ありがとうなっ」 〝うっ!〟 とても優しく微笑む弥に、玲奈の胸は激しく高鳴り、赤面して行くのがわかる。 それを悟られまいと玲奈は弥に背を向け目を閉じる。 「うめーな……」 弥が旨そうにおにぎりを食べる (そっかな……。なんだったら、これからは私が……)
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