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「ふ~ん」
とクラスメイトはニヤニヤと俺を見た。見つめないでほしい、ドキドキする。
「ねえ、恋愛相談乗ってあげようか?」
「い、いや……」
相談したところで現実は変わらない。俺が失恋することがどんどん明らかになるだけだ。だから、俺は断った。
「……すこしだけ、聞いて欲しい」
断った、はずだった。
けれど、どうかしてる俺は、無駄とわかっていてもなにかにすがりたくなっていたんだ。
「うん、いいよ。話して御覧なさい。私はこう見えて恋愛キングなんだから!」
と彼女は自らの大きな胸をポンとたたいて自慢げに言った。クイーンじゃないのかよ。
◇
「なるほどねぇ。つまり、奪われちゃったと」
「う、奪われたわけじゃない。俺のじゃないわけ、だし……」
「弱気だなぁ、浅川は」
俺は彼女と過ごしたこの一か月と、この一週間の敗北を話した。クラスメイトは実に楽しそうに俺の話を聴いていた。それといつの間にか呼び捨てになってた。
「どうしたらいいと思う?」
「んー、さあ?」
ひどいと思う。聞き出すだけ聞き出しといて。
「まあ、そうだよな。どうしようもない、よな」
と俺は諦めを口にした。もともとなにもしないつもりだったんだ。なにもできないことはわかっていた。クラスメイトと話し、得られたことは『俺の諦めは正しい』ということだけらしい。
「ん? それは違うんじゃない?」
そうでもないらしかった。
「え?」
「私はどうしたらいいかなんてわかんないけどさ、好きなのに何もしないっていうのは、間違ってると思うなぁ」
「じゃあ、どうしろっていうんだ」
「だからわかんないってば」
いたちごっこだ。意味がない問答だった。
「はぁ、帰る。でも、相談に乗ってくれてありがとう」
意味はなかった。解決はしなかった。だけど、気持ちを吐き出したかったのは確かだった。だから、俺はクラスメイトに感謝した。
「あのさ、浅川っち」
俺が教室から出る瞬間、クラスメイトは口にする。
「私なら奪われたものは奪い返すよ。その方法は何回も言う通りわっかんないけどね」
俺はクラスメイトの方へ振り返った。その子は笑顔で俺に手を振っていた。
「いってらっしゃい!」
「……さよならだろ。ありがとう」
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