自転車が止まる。

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 ◇  候補の道は5つあった。その道それぞれを実際に走り、時間を計測する。  さらにそこから実際の時間帯の人通りなどからロスタイムを計算し、一つの道を導き出した。  道は決まった。あとは速くなるための技術だ。  筋力はこれから鍛えたのでは間に合わない。だが、テクニックなら、身に着けることができるかもしれない。  まかり角でのドリフト、障害物をよけるためのハンドルさばき、ショートカットに必要なジャンプなど。  危ないのはわかっている。もしかしたら、歩行者を傷つけてしまうかもしれない。周りのことを考えない、屑にしか見えないだろう。俺はルールを破ってばっかりだ。  自転車の二人乗りだってそうだし、俺は事と次第によっては信号無視すら視野に入れている。普通に犯罪だ。  俺は何時からそんな悪い奴になったんだ。ここまで真面目に生きてきた。誰より早く家に帰り、誰にも迷惑をかけず、誰にも心配をかけず、一人で生きてきた。  俺はどう考えても正しいだろう? 真面目ですごくいい人間に違いないんだ。ルールの上では模範的な人間のはずだろう? でも、本当は。  とてつもなくつまらない人生だった。  俺はいまになって反抗期がやってきたのかもしれない。思い切りルールを破って、恋に溺れて、誰かに迷惑をかけて、どう考えても正しくない。不真面目で悪い人間に違いないんだ。けれど。  とてつもなく生きているって感じがした。  どうしても駆け抜けたいんだ。俺は今までの真面目な人生を賭け金に、この恋へベットする。  俺はもう、止まれない。  目の前には大きな坂が立ちふさがった。
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