自転車が止まる。

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 今まで逃げてきたあの坂だ。  俺はこの急こう配の坂を見て早々に諦めた。どうせ無理だと。効率が悪いと。 「この坂を上れなけりゃ、バイクには勝てない」  なあ、俺よ。本当に無理か? 本当に効率が悪いかよ?  どう考えてもこの坂を上る方が早いんだ。悪い効率なんてたかだか俺が疲れるかどうかってことぐらいだろう。無理かどうかなんてやる前から決めることじゃないだろう。  なにより俺は。 「ナンバー1だ」  坂の20メートル前、呼吸を整える。焦りを抑える。イメージした。ここまでの道のりを。  イメージのそのスピードに乗るように、俺はペダルを漕いだ。まっすぐ、まっすぐ坂に向かって加速した。  助走は申し分ない、このままのスピードで! 「ふんごぉらっ!!」  勢いよく坂を駆け上がる。そして、坂の半分で失速し、登りきる前に自転車は止まった。
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