そして俺が走る。

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 そして、取り残される俺と彼女。 「か、帰ろうか」 「あ、じゃあ着替えてきますね」  そういい彼女はそそくさと俺の前から消えた。帰ってきた彼女は、私服だった。いや、そりゃ今日土曜日だし制服ではないのは決まってる。彼女は水色のミニワンピースに黒のショートパンツと正直、俺好みの可愛らしいコーディネーションだった。 「え、っと」 「どうですー? 先輩? 可愛いでしょ? 普段と違う私を演出してみました!」 「じ、自分で言うんだ……」 「だって、浅川先輩そういうこと言わなそうだしー」  確かに言わないだろうな、俺は。恥ずかしすぎる。可愛いなんて言葉を口にしたのなんて、家で萌えアニメ見てる時くらいだ。独り言じゃんこわ。 「じゃあ、帰ろうか」 「はーい」  久しぶりのことだ。彼女と二人で、一緒に帰る。俺の人生で一番幸せなあの瞬間。彼女は後輩であるにも関わらず、いつもくだらない話をして俺を楽しませてくれた。  そんないつもとは違うものが二つ。まず、帰り道。これは仕方ない。  だが、問題はもう一つの方だった。 「ところで、どうやって帰ります?」 「徒歩、かな?」  今までの湯に自転車もなければ、ここがどこかもわからない。あのお兄さん、とんでもないことをしてくれたものだ。けど、感謝もしてる。 「わー、アイスクリーム屋さんがありますよー」 「欲しいの?」 「はい、さつまいも味が」 「もう味まで決まってるんだ。わかったよ」  知らない道を二人で歩いた。いろんな発見がある。こうして徒歩だからこそ、見つかるものもある。自転車ばかりのいままでには見えない景色だって見えてきた。 「あ、メンチカツ半額ですって。せっかくだし寄ってきません?」 「いや、せっかくも何もここコンビニじゃん」  早さばかりにこだわっていた。そんな俺はこうして理由もなく寄り道なんてすることはなかっただろう。 「たーずーねーびーとースーテッーキ~。はい、左です!」 「勘でいくのやめよう? お願い地図見て」  本当の本当に夢のような時間だ。俺はもっともっと彼女と一緒にいたい、そう思った。だから。
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