第1章

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不意に聞き覚えのある名前が耳に入ったので、あたしはお昼過ぎで賑わうファストフード店の店内をそっと見渡した。 「お前さぁ~いい加減朱里のこと許してやったら?なにしたって言うんだよ…」 このファストフード店は、二人用の座席を区切る壁が結構高くて、お一人様でもいい感じの閉鎖空間が確立されているのがお気に入りで、たまに仕事中のお昼休みにやって来る。 声の主は、丁度あたしの席のすぐ横のようだが、高い壁のお陰で全く人の姿は見えない。 でも、さっき、確かに「智哉」って聞こえた様な気がした。 よくある名前かもしれないけど、やっぱり気になる。 ツーリングを一緒にして、話もしたりしてお知り合いくらいになったゴミの彼もとい、智哉くん。 口数が少ないけど、やっぱり気遣いが出来る優しい子だった。 優しい子… 年下って、意識してる…。 そりゃ…学生だし…実際4つも下だし…。 ていうか、あれから2週間くらいたつけど、全然会ってないし。 連絡先も交換してないから…進展のしようがない。 だから、不意に聞こえた名前に反応しちゃったけど、そんな偶然あるわけないし(笑)
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