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「人体模型より怖い夢。ヒナちゃんが起こしてくれて良かった」
目が合って、伏せた拍子にこぼれてしまう涙。
悲しいという表情の代わりに鳴瀬さんの目から涙がこぼれる。
拭うことも我慢することもなく、捻った蛇口のように涙が流れて止まらなかった。
「どんな夢を見ていたんですか…?」
ドクドクと心臓が鳴っている。鳴瀬さんが涙をこぼしたその瞬間から。
また合う目が“助けて”と言っているように濡れていて胸が締め付けられて。
「ヒナちゃんは知らなくていい夢。知らない方が…いい夢」
乱れていた呼吸が落ち着く度、鳴瀬さんが感情を押し込めて殺していくように見えました。
鳴瀬さんはきっと今、私の知らない“何か”に怯えて無表情の奥で泣き叫んでる。
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