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そんな花畑が途中で途切れている場所があった。
そこを見つめていた母の手を放すと僕は花畑を駆け回った。
右へヨロヨロ左へヨロヨロ。
走り過ぎた僕の足は千鳥足。
そして僕は何かで躓いた。
足元をまさぐると太い木の根が地面から栄えていた。
「正哉。そろそろ帰りましょう…?」
「………」
俯いて黙り混む僕に母は静かに近寄ってくる。
僕は木の根を見たまま母が近づいて来るのを待った。
「母様…僕は……母様がすきです。」
涙。僕の頬を伝い涙が木の根に横たわる猫の亡骸に落ちた。
周りが花で囲まれたここは最高のお墓だろう。
「だから…僕はずっと母様といっしょにいたかったです」
急に立ち上がった僕の顔を見た母は驚いたように一瞬立ちどまるとこちらに必死で走ってくる。
「ばいばい、おかあさん」
『森の奥には行ってはいけないよ。花畑は綺麗だよ。けれど、綺麗な物には理由がある。あの花畑は途中から崖になっているのさ。そこで毎年自殺者や事故死がおきる。その血をすって花は綺麗になっていく。正哉、母様はね、死ぬ時はそんな花畑で死んでもいいと思っちゃったくらい綺麗な所だったんだよ』
「正哉!!」
落ちていく身体。
堕ちていく精神。
そんな中で僕は母様の言葉を思い出した。
悲鳴に似た声を上げ崖に手を着ける母に僕は涙を拭わず笑った。
母様のすきなおはなに僕はなるんだよ…───
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