第1章 異端ハイスクール

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―ニュアンスってやつは大事だと思う。  俺が教室の机に座った瞬間つくづく痛感した。 普通ではない(アブノーマル)と言われると皆はどんな人間を思いつくだろう。 俺は勉強も出来ないし運動も無理、何か特技があるかと言えば何もない。そんな奴のことをアブノーマルと思っていた。常識的にな。 俺の入学した能丸学院には【普通科】とは別に【普通になる科】って科がある。【する】ではなく【なる】っていうのがキーポイントだ。普通になりたい生徒が自分の意志でどちらか一つを選択出来る。 自分が普通じゃないと自覚している奴らが自分はバカですよ~っていいながら志望するってことだ。 俺もそのバカの一員だ。 勉強、運動、その他多数の動詞で表されるものは全て10点満点中平均5点も取れない―いわゆる普通以下だ。 でも、その俺の認識は一つの銃声で壊された。 ―パァァッン!  いや、比喩じゃなくてマジなコレ。あたりは硝煙匂いが充満する。普通的(俺が考えた日本語)に言えばロケット花火を打ち上げた匂いだ。 「この通り、俺は軍人だ。 名前は浅海井 宗太郎(あざむい そうたろう)。 よろしく頼む」 拳銃を上に向け、高らかに宣言。 「出席番号1番の浅海井君、元気のいい挨拶ありがとうございます。次は後ろね♪」 そんなのが元気のいい挨拶なら俺でも出来るわっ! いや、拳銃は撃てねぇけどなっ! その後、個性の強い自己紹介が続いて俺にそのたすきがまわってくる。 「お、俺の名前は諸布 柘敬(もろふ つうや)です。趣味は読書です、よろしくお願いします。」 「は~い、よろしくね。 もの凄く普通な挨拶でしたね、みんなも見習いましょうね」  自分の自己紹介と他人の自己紹介を頭の中で比べて俺は確信した。 ―あれ? 普通を下方修正した奴……俺だけ? 俺はアブノーマルのニュアンスを無能と異端で履き違えていた。 泣きたいぜ。
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