73人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
岡野「恥ずかしいですから」
鷲見「今のもいい顔だな」
と、余裕の笑みを見せられ、心臓が早鐘状態だ。
鷲見「とりあえず、座れよ」
手首を引っ張られて、鷲見社長の隣に腰をおろすことになる。
鷲見「この世界は、足の引っ張り合いもある。いろいろと裏を見れば、汚いこともあるし、俺がそれに手を染めてないとは言えない」
岡野「っ!!」
鷲見「が、この件に関しては、俺はシロだ。それを信じてくれるか?」
手をぎゅっと握りしめられながら、聞かれた。
岡野(すごく真剣なまなざし……)
一度、ごくりと唾を飲み込んだ。
澄んだきれいな瞳を見ていると、僕の胸のうちからあふれてくるあたたかいものがある。
岡野「……僕は、信じたいです」
鷲見「……たい……か……。いや、今の時点で、そう言ってくれたことに感謝すべきだな」
岡野(あ……っ。信じてるって言ってほしかったんだ……どうしよう……傷つけちゃったかな?)
そう思うと、つきっと胸が痛む。
岡野(でも、僕の言葉でなんて、動じないよね。鷲見社長だもん……でも、どうしても、少し悲しそうに見えるよ……)
鷲見「そんな顔をするな。ほら、元気が出るおまじないだ」
岡野「んんっ」
また、アメ玉を口に押し込められた。
岡野(いつものミント味のはずなのに……なんだか……今日は、しょっぱい気がする……)
鷲見「さ、そろそろ風が出てきたな。帰るぞ。今、田村を呼びだす」
岡野「……どうも……」
(あ、僕……今、一瞬、このまま別れるのが、嫌だって思った……でも、どうして……同情で?……でも、それだけじゃない気がする……)
最初のコメントを投稿しよう!