第5話

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岡野「恥ずかしいですから」 鷲見「今のもいい顔だな」 と、余裕の笑みを見せられ、心臓が早鐘状態だ。 鷲見「とりあえず、座れよ」 手首を引っ張られて、鷲見社長の隣に腰をおろすことになる。 鷲見「この世界は、足の引っ張り合いもある。いろいろと裏を見れば、汚いこともあるし、俺がそれに手を染めてないとは言えない」 岡野「っ!!」 鷲見「が、この件に関しては、俺はシロだ。それを信じてくれるか?」 手をぎゅっと握りしめられながら、聞かれた。 岡野(すごく真剣なまなざし……) 一度、ごくりと唾を飲み込んだ。 澄んだきれいな瞳を見ていると、僕の胸のうちからあふれてくるあたたかいものがある。 岡野「……僕は、信じたいです」 鷲見「……たい……か……。いや、今の時点で、そう言ってくれたことに感謝すべきだな」 岡野(あ……っ。信じてるって言ってほしかったんだ……どうしよう……傷つけちゃったかな?) そう思うと、つきっと胸が痛む。 岡野(でも、僕の言葉でなんて、動じないよね。鷲見社長だもん……でも、どうしても、少し悲しそうに見えるよ……) 鷲見「そんな顔をするな。ほら、元気が出るおまじないだ」 岡野「んんっ」 また、アメ玉を口に押し込められた。 岡野(いつものミント味のはずなのに……なんだか……今日は、しょっぱい気がする……) 鷲見「さ、そろそろ風が出てきたな。帰るぞ。今、田村を呼びだす」 岡野「……どうも……」 (あ、僕……今、一瞬、このまま別れるのが、嫌だって思った……でも、どうして……同情で?……でも、それだけじゃない気がする……)
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