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翌日僕は、朝からずっとオフィスでみんなのギスギスした視線にさらされていた……。
岡野(空気がピリピリしてる。あれからスパイ騒ぎのことは、どうなったんだろう?でも、この雰囲気じゃ、とても自分からは聞き出せないよ……)
土師「やっぱり、鷲見社長が怪しいに決まってる」
岸「不確かなことを言うな」
土師「岸さんだって、そう思ってるくせに……」
岸「…………」
葛原「どっちにしろ、うちの社長が沈黙しているんだから、なにもできないだろ?」
崩しながらもスタイリッシュさを失わないスーツを着こなす葛原さんが言う。
岡野(やっぱり、鷲見社長が、怪しいことになっているんだ……昨日、僕をかばったから、よけいに立場が悪くなってるのかも……)
そう思うと、胸が苦しい……。
喜多嶋「おい、仕事の話をしているんだろうな」
そこへ喜多嶋社長が出勤してきた。
一斉に、しんとなる。
あの土師さんも、そそくさと仕事に戻った。
岸「社長、今日のスケジュールですが」
喜多嶋「ああ、それは社長室で聞く」
岸「わかりました」
能面のような表情の岸さんが、喜多嶋社長と一緒に社長室へと消える。
土師「岸さん、社長に進言してくれるのかな?」
葛原「そんなこと、お前が気にすることじゃないだろ?」
土師「そうだけどな……」
土師さんは口を尖らせて、なにやら不満げだ。
葛原「それにしても、確かに喜多嶋社長は今回沈黙を貫いているよな」
整った顔を、うっすらと曇らせた葛原さんがぼそりと呟いた。
岡野(まさか……喜多嶋社長まで疑ってるってことはないよね……鷲見社長の友達なのに……)
長い髪が揺れる真っ直ぐに伸びた鷲見社長の後ろ姿が浮かぶ。
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