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鷲見「前もって電話していたのが効いたかな?」
岡野「喜多嶋社長に?」
鷲見「俺は、ヒロとの仕事を辞める気はないと、打診しておいた」
岡野「よかった……」
ほっとして、吐息をついた。
鷲見「本気の顔だな」
岡野「……?お世辞でなんて言いませんよ」
鷲見「そうだな。ヒロに、そんな器用なことはできない。そこが、お前のいいところだからな。裏表がない……というか、作れないだろ?」
ニヤリとする顔に、どきっとなる。
そして嬉しさで、顔がほころんだ。
たぶん、うっすらと赤くもなっていただろう……。
鷲見「ヒロ……そんな嬉しそうな顔をすると……」
岡野「っ?」
(なんだか切羽詰まった声……)
鷲見社長が、そっと手を伸ばしてきた。
節の高い指が、僕の頬に触れようとする……。
岡野(どうして、僕は、逃げようとしないんだろう……)
ただじっと身を固めて待っていた時、ノックの音とともに田村さんが入ってきた。
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