第5話

7/8
前へ
/36ページ
次へ
鷲見「前もって電話していたのが効いたかな?」 岡野「喜多嶋社長に?」 鷲見「俺は、ヒロとの仕事を辞める気はないと、打診しておいた」 岡野「よかった……」 ほっとして、吐息をついた。 鷲見「本気の顔だな」 岡野「……?お世辞でなんて言いませんよ」 鷲見「そうだな。ヒロに、そんな器用なことはできない。そこが、お前のいいところだからな。裏表がない……というか、作れないだろ?」 ニヤリとする顔に、どきっとなる。 そして嬉しさで、顔がほころんだ。 たぶん、うっすらと赤くもなっていただろう……。 鷲見「ヒロ……そんな嬉しそうな顔をすると……」 岡野「っ?」 (なんだか切羽詰まった声……) 鷲見社長が、そっと手を伸ばしてきた。 節の高い指が、僕の頬に触れようとする……。 岡野(どうして、僕は、逃げようとしないんだろう……) ただじっと身を固めて待っていた時、ノックの音とともに田村さんが入ってきた。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

73人が本棚に入れています
本棚に追加