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田村「社長、ちょっといいですか?」
鷲見「ああ、今、行く。少し待っていてくれ」
岡野「はい」
鷲見社長が出て行く先に、ちらりと黒服にサングラスの男が見える。
その黒づくめの男は、田村さんに耳打ちしながらなにやら話していた。
そこへ鷲見社長が行き、緊張した面持ちになった後に、扉が閉じられてしまう。
岡野(いったい、あれは……誰なんだろう?確かに葛原さんが言ったように、かたぎの人には見えないけど……いけない。疑うようなこと……信じるって決めたのに……でも……)
どうにも複雑な気持ちになった。
しばらくして、鷲見社長が戻ってくる。
鷲見「待たせたな」
岡野「いえ……」
鷲見「ヒロ……顔色が悪いぞ」
岡野「大丈夫ですよ。今の人は?」
鷲見「ああ、あれか……あいにく素性は言えないな」
岡野「そ、そうなんですね」
視線がさまよってしまう。
鷲見「今のを、疑っているのか?」
辛そうな吐息とともに吐きだされた言葉に、びくりとなった。
岡野「そんなことはないです」
鷲見「どうして、俺の目を見て言わない」
昏い声で、鋭く言われる。
熱っぽいまなざしは、僕を射ぬいていた。
そして、次の瞬間ーー!
岡野「えっ」
いきなり、鷲見社長の長い腕が伸びてきて、僕のネクタイをつかんだ。
そしてそのまま引っ張られる。
岡野「っ!!」
(なにっ!?)
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