第5話

8/8
73人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
田村「社長、ちょっといいですか?」 鷲見「ああ、今、行く。少し待っていてくれ」 岡野「はい」 鷲見社長が出て行く先に、ちらりと黒服にサングラスの男が見える。 その黒づくめの男は、田村さんに耳打ちしながらなにやら話していた。 そこへ鷲見社長が行き、緊張した面持ちになった後に、扉が閉じられてしまう。 岡野(いったい、あれは……誰なんだろう?確かに葛原さんが言ったように、かたぎの人には見えないけど……いけない。疑うようなこと……信じるって決めたのに……でも……) どうにも複雑な気持ちになった。 しばらくして、鷲見社長が戻ってくる。 鷲見「待たせたな」 岡野「いえ……」 鷲見「ヒロ……顔色が悪いぞ」 岡野「大丈夫ですよ。今の人は?」 鷲見「ああ、あれか……あいにく素性は言えないな」 岡野「そ、そうなんですね」 視線がさまよってしまう。 鷲見「今のを、疑っているのか?」 辛そうな吐息とともに吐きだされた言葉に、びくりとなった。 岡野「そんなことはないです」 鷲見「どうして、俺の目を見て言わない」 昏い声で、鋭く言われる。 熱っぽいまなざしは、僕を射ぬいていた。 そして、次の瞬間ーー! 岡野「えっ」 いきなり、鷲見社長の長い腕が伸びてきて、僕のネクタイをつかんだ。 そしてそのまま引っ張られる。 岡野「っ!!」 (なにっ!?)
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!