第4話

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今度はとっさに否定するのを忘れた。 土師「やっぱり、お前、鷲見社長に籠絡されて、情報を出したんじゃ」 岡野「鷲見社長は、悪い人には見えません」 葛原「どうして、そう思う?責任が取れるのか?」 岡野「勘です」 鷲見「勘なら、嬉しいな。人間の深層心理が一番出る」 岡野「鷲見社長!!」 振りかえると、鷲見社長が田村さんを引き連れて、オフィスに入ってきている。 鷲見社長のスーツは、まるで男の戦闘服のような攻撃性があふれるように隙がない。 そう感じるのは険しい表情のせいかもしれないけど……。 鷲見「よってたかって、ヒロを疑うのは解せないな。豆ヒロに、そんなことができるわけないだろ?」 岡野(かばってくれた……) ひどく、それが嬉しい。 岸「今日は喜多嶋とのお約束は、なかったはずですが?」 警戒するように言う岸さんに、鷲見社長は、にやりと笑った。 鷲見「わかっている。今日は豆ヒロと打ち合わせだ」 岡野「え……」 岸「それも、なかったはずでは?」 先に言われたけれど、つかつかと大股で鷲見社長が僕のところへ歩み寄る。 鷲見「今、予定ができた」 いきなり腕をつかまれた。 岡野「は、はい」 反射的に答えると、ぐいっと手を引かれ、歩き出す。 岡野(わ、連れていかれる……。ここから、助け出そうとして?) 葛原「っ」 葛原さんが、止めようとしたけれど、それは岸さんが制した。 岸「打ち合わせだ。まだ、なにも決まってないことで、騒ぐな」 葛原「けど……」 岸「葛原っ」 葛原「……っ」 結局、僕は、そのまま部屋から連れ去られてしまう。
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