第9話

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軽症の僕は大部屋だったけれど、鷲見社長は集中治療室に入れられている。 喜多嶋社長が話をつけてくれて鷲見社長の病室に入れたのは、その日の夕方になってからだった。 喜多嶋「鷲見、岡野が来てくれたぞ」 岡野「鷲見社長!」 僕はすぐに、ベッドの側に座る。 岡野(寝てる……昏睡してるの?) 「やっぱり、目を覚まさないんですか?」 喜多嶋「ああ。場合によっては、1年かかるか、それ以上か……」 岡野「そんなぁ……」 思いがけず、涙がこぼれそうになる。 喜多嶋「とりあえず、後は任せた。お前の力なら、きっとこいつを呼び戻せる。頼んだぞ」 喜多嶋社長はそう言うと、病室から出ていった。 岡野「鷲見社長、僕です。ヒロが来ましたよっ」 泣きそうになるのを必死に堪えて、話しかける。 そうしながら、鷲見社長の手をしっかりと握った。 岡野(冷たい……でも、まだ生きてるんだよね……) たまらずに、涙がこぼれる。それが、数滴、鷲見社長の手に落ちる。 岡野「鷲見社長……お願いです。起きてください。まだ、僕と仕事をするんでしょう?一緒に、まだいろいろと行きたいところだってあるのに……鷲見社長っ!!」 絞り出すような声で、必死に呼びかけ続ける。 でもその日は、声が返ってくることはなかったーー。
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