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軽症の僕は大部屋だったけれど、鷲見社長は集中治療室に入れられている。
喜多嶋社長が話をつけてくれて鷲見社長の病室に入れたのは、その日の夕方になってからだった。
喜多嶋「鷲見、岡野が来てくれたぞ」
岡野「鷲見社長!」
僕はすぐに、ベッドの側に座る。
岡野(寝てる……昏睡してるの?)
「やっぱり、目を覚まさないんですか?」
喜多嶋「ああ。場合によっては、1年かかるか、それ以上か……」
岡野「そんなぁ……」
思いがけず、涙がこぼれそうになる。
喜多嶋「とりあえず、後は任せた。お前の力なら、きっとこいつを呼び戻せる。頼んだぞ」
喜多嶋社長はそう言うと、病室から出ていった。
岡野「鷲見社長、僕です。ヒロが来ましたよっ」
泣きそうになるのを必死に堪えて、話しかける。
そうしながら、鷲見社長の手をしっかりと握った。
岡野(冷たい……でも、まだ生きてるんだよね……)
たまらずに、涙がこぼれる。それが、数滴、鷲見社長の手に落ちる。
岡野「鷲見社長……お願いです。起きてください。まだ、僕と仕事をするんでしょう?一緒に、まだいろいろと行きたいところだってあるのに……鷲見社長っ!!」
絞り出すような声で、必死に呼びかけ続ける。
でもその日は、声が返ってくることはなかったーー。
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