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鷲見社長が入院して、数日が過ぎたーー。
僕は今日も病室で鷲見社長に付き添っている。
いつも豪胆で不敵な笑みを浮かべる人が、今は血の気のない顔で目を閉じていた。
それが、どうしようもなく胸を締め付けてる。
岡野(まだ、意識不明のまま……このまま目を覚まさなかったら、どうしよう……)
そんな不安にとらわれてしまう時間が多くなった。
岡野(でも、僕があきらめちゃいけないよね。ちゃんと明るくしてないと)
「鷲見社長、今日は葛原さんと岸さんもお見舞いに来てくれたんですよ。それで、きれいな花をもらいましたから、飾っておきますね。いい匂いでしょう?花も綺麗ですから、目を覚ましてください」
声をかけるけれど、眉ひとつ動かない。
岡野(……鷲見社長……)
汗を拭いたり、髪を整えたりと、僕はできることを見つけては世話を焼く。
岡野(喜多嶋社長が有給を使わせてくれてよかった)
ほっとしながら、ひと息をついた時、扉が開いて田村さんが入ってきた。
岡野「え?」
その後ろには、顔にキズのある黒服の男がついている。
田村「失礼します」
岡野「田村さん」
田村「すいません。遠慮してもらえないでしょうか?」
岡野「えっ」
田村「鷲見社長の警備を強化する必要があるんです。実は、狙撃犯が脱走しました」
岡野「田村さんが捕まえた人ですよね」
実は田村さんは元SPで、その腕を買われて鷲見社長のカバン持ちをしていたのだと喜多嶋社長から教えられていた。
黒服「そうだが、仲間の手によって取り逃してしまった。我々警察の失態だ」
悔しそうに黒服の人が言う。
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