第10話

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岡野「どこに行ってたんですか?お医者さんはまだ無理するなって言ってたでしょ?」 鷲見「すっかりよくなってるんだ。いつまでも、仕事を休むわけにはいかないしな」 岡野「……慶さん……」 鷲見「喜多嶋と会ってきた」 岡野「えっ」 鷲見「できればお前をうちの社に欲しいと、わがままを言ってきたところだ」 岡野「喜多嶋社長にですか!?」 (……連絡役は病院でしていたけれど、ずっと出社してないから、どうしようって申し訳なかったのに……) 鷲見「喜多嶋は、快く受けてくれたぞ」 岡野「ええっ」 鷲見「一発、殴られたけどな」 岡野「っ!!そんな、慶さんはケガ人なのにっ」 鷲見「別にケガしたところを殴られたわけじゃない」 岡野「大丈夫なんですか?」 鷲見「ああ、あれくらいの拳で、お前が手に入るならな」 岡野「あの……じゃあ、僕は本当に、慶さんの会社に移ることに?」 鷲見「すぐにクール岸が、手続きをしてくれるそうだ」 岡野「とにかく、一度会社に行きます」 鷲見「それなら、明日、俺と一緒に行こう。逆に説得されたら、たまらない」 岡野「……今さら、それはないですけど……みんなにお世話になったから、ちゃんとけじめをつけたいんです」 鷲見「けじめは、拳でつけてきたぞ」 岡野「それは、慶さんの、でしょう。僕の気持ちの問題ですから」 鷲見「そういうところが、お前らいしいな」 おでことおでこをくっつけられた。 岡野「慶さん……」 じっと灰色のまなざしが僕だけに注がれている。 吐息がくちびるをくすぐったかと思うと、もうしっかりとキスを奪われていた。 岡野「んっ……」 (いつも突然なんだから……) 慶さんにキスされると、あらがえない魔法にかかったように、たちまち体から力が抜ける。 そして、ほんのり世界が色づくのだ。 鷲見「キスすると、お前の体はすぐにとろけるな」 岡野「それは、慶さんのキスがうますぎるから……」 鷲見「そうあおるな」 不敵な微笑みを浮かべた慶さんが、僕を翻弄していった。
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