第10話

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鷲見「ヒロ、今夜は転職祝いだ」 ラクルを辞めた日の夜、慶さんは僕を高級レストランに連れてきてくれた。 岡野「ありがとうございます」 鷲見「今日、喜多嶋と会っていた時、なにを考えてた?」 岡野「えっ……たぶん……ふたりって、仲がいいなあって、ちょっとうらやましくて……」 鷲見「まったく、かわいいことでやきもちを妬くな。ここでだって、襲うぞ」 岡野「っ!!」 カーッと頬が火照ってしまう。 鷲見「その顔もいいが、もっと真っ赤になってもらおうか?」 岡野「もっとって……?」 きょとんとした僕の顔に、慶さんはとろけるような笑みを向けた。 鷲見「これを、受け取ってくれ」 岡野「えっ」 いきなり手を取られ、小さな箱を握らされた。 鷲見「開けてみろ」 岡野「はい……」 (え、え、これって、もしかして……でも、まさか……) ドキドキしながら小箱を開くと、いつももらうアメ玉と同じ色の石がキラリと光っている。 鷲見「カラーダイヤモンドだ。きれいなものだろ?お菓子みたいな色も、お前に似合うと思ったんだ」 岡野「これ……」 鷲見「婚約指輪以外の何に見える?俺はお前とエンゲージしたい。結婚しろよ、ヒロ」 岡野「っ!!」 鷲見「もちろん、日本じゃ法律的に同性で結婚するのは無理だが、俺の籍に入ることはできる。そして、一緒に暮らそう。もう一緒に暮らしているようなものだが、お前のアパートは引き払う。もう田村が掃除しているはずだ」 岡野「え?引き払った後?え?田村さんが?」 鷲見「文句はないだろ?」 腹黒い笑みを浮かべられ、僕は降参だ。 岡野(どのみち、断るつもりはなかったんだし……) しょうがないなあという笑みを浮かべると、慶さんも微笑み返してくる。 鷲見「さあ、手を出して」 言われるままに手を委ねると、すっと冷たい感覚が指を滑っていった。 岡野(本当に、慶さんと……僕が?……まだ信じられない……) 自分の指で輝くリングを見ながら、僕は目をしばたたかせた。 鷲見「今夜は、特別な夜になるな」 艶っぽい声で告げられ、甘い熱に頭までおかされそうだ。
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