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鷲見「ヒロ、今夜は転職祝いだ」
ラクルを辞めた日の夜、慶さんは僕を高級レストランに連れてきてくれた。
岡野「ありがとうございます」
鷲見「今日、喜多嶋と会っていた時、なにを考えてた?」
岡野「えっ……たぶん……ふたりって、仲がいいなあって、ちょっとうらやましくて……」
鷲見「まったく、かわいいことでやきもちを妬くな。ここでだって、襲うぞ」
岡野「っ!!」
カーッと頬が火照ってしまう。
鷲見「その顔もいいが、もっと真っ赤になってもらおうか?」
岡野「もっとって……?」
きょとんとした僕の顔に、慶さんはとろけるような笑みを向けた。
鷲見「これを、受け取ってくれ」
岡野「えっ」
いきなり手を取られ、小さな箱を握らされた。
鷲見「開けてみろ」
岡野「はい……」
(え、え、これって、もしかして……でも、まさか……)
ドキドキしながら小箱を開くと、いつももらうアメ玉と同じ色の石がキラリと光っている。
鷲見「カラーダイヤモンドだ。きれいなものだろ?お菓子みたいな色も、お前に似合うと思ったんだ」
岡野「これ……」
鷲見「婚約指輪以外の何に見える?俺はお前とエンゲージしたい。結婚しろよ、ヒロ」
岡野「っ!!」
鷲見「もちろん、日本じゃ法律的に同性で結婚するのは無理だが、俺の籍に入ることはできる。そして、一緒に暮らそう。もう一緒に暮らしているようなものだが、お前のアパートは引き払う。もう田村が掃除しているはずだ」
岡野「え?引き払った後?え?田村さんが?」
鷲見「文句はないだろ?」
腹黒い笑みを浮かべられ、僕は降参だ。
岡野(どのみち、断るつもりはなかったんだし……)
しょうがないなあという笑みを浮かべると、慶さんも微笑み返してくる。
鷲見「さあ、手を出して」
言われるままに手を委ねると、すっと冷たい感覚が指を滑っていった。
岡野(本当に、慶さんと……僕が?……まだ信じられない……)
自分の指で輝くリングを見ながら、僕は目をしばたたかせた。
鷲見「今夜は、特別な夜になるな」
艶っぽい声で告げられ、甘い熱に頭までおかされそうだ。
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