嘘ツキ

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「君に会いたいんだ。どうしても」 あなたの言葉に、どきりとする。 「それはダメです。きっとネットだけで知っているから、会いたくなるんですよ。リアの姿を知ったら、がっかりしますよw」 嘘。本当は、会いたい。あなたがどんな人か、見てみたい。 「君の実際の容姿なんて、関係ない。一人の人間として、好きになったんだから」 どうしてあなたは、いつも私が欲しい言葉をすぐにくれるの? もっと、あなたと話していたい。隣にいて欲しい。 でも……。ダメ、ダメなの。 緊張で、画面を打つ指が震える。 これで終わりにしなくちゃいけない。 これであなたは、きっと幻滅して、私への興味を失うから。 もっと素敵な、あなたを大切にしてくれるリアの誰かと、どうか幸せになってね。 「じゃあ、本当のことを言いましょうか? 私、ちびデブですよw 短足で、歩くとドシドシ音がしそうな感じの。毎日料理するのも面倒で、宅配ピザばかり食べてるからですけどもww」 さっきまですぐに返ってきていた、あなたからの言葉が、止まる。 うん、やっぱりね。 大抵の男は、これで諦めるから。向こうの夢をぶちこわしてしまうのが、一番早いの。 「わかった。そんな嘘をついてまで、君は僕に会いたくないんだね。」 しばらくして、あなたからの返信。 ああ、どうして。どうしてあなたは、そうやって私の心に入ってくるの? 私の全てを、見透かすの? 不意に、目頭が熱くなる。 ぬぐおうと指を目にやったけれど、すでに涙は、頬を流れ落ちたあとだった。 私は、あなたを傷つけてしまった。 大好きなあなたを、どうしようもない嘘で……。 「この話は、もうしないことにする。君が、僕のことを嫌いでもいい。いつも街ですれ違う見知らぬ誰かが、もし君だったらいいなと、思うに留めておくよ」 涙が次々と、頬を流れ落ちる。 私は、顔をあげて病室の窓の外を見た。 ごめんなさい。 私は、自分の力では歩くこともできないの。 あとどれだけの嘘をついたら、あなたは私を忘れてくれるだろう。 私は再び画面に指を伸ばし、あなたへメッセージを送る。 「ありがとう。これまでたくさんお話しできて、楽しかったわ。さようなら。」 FIN.
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