33人が本棚に入れています
本棚に追加
「はい。それをお伝えしておりませんでしたね…。少し高いですが、命の値段だと思えば…」
倉田はそう言って指を二本出した。
「如何ですか」
「二百万ですか…。やはり高いですね…」
その指を見て健一は驚いてそう言った。
「いえ。二千万です」
倉田はそう言うとまた微笑んだ。
「に、二千万ですか…。命の値段」
健一は茫然としてそう呟いた。
「薬を飲んで激痛に耐え切れず死亡された際には代金は頂きません。もちろんそのための保険には加入して頂きますが。もし、激痛に耐え生き残った場合のみ二千万円をお支払い頂きます。そんなに高い買い物ではないと思いますが…」
倉田は淡々と説明していた。
しかし既に健一の耳には入って無かっただろう…。
「いかがですか…決心はつきましたか」
倉田はそう言うとタバコを咥え、火をつけた。
既に日が陰り始めていた。
このパーフェクトライフコンサルティングオフィスに来て六時間が過ぎていた。
健一は激痛に耐えうる事が出来るかという不安と、二千万という高額な値段の問題を抱えていた。
静かな部屋には壁にかかる高級そうな時計の秒針の音だけが響く。
倉田の前にある灰皿は既に吸い殻でいっぱいだった。
「わかりました。ではこの薬にまつわる話をしましょう」
倉田は何杯目かわからないコーヒーを一口飲んだ。
最初のコメントを投稿しよう!