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魏粛は咸陽の外れにある大きな楠の下で昼寝をしていた。
ここで祭承様は紅雀と青雀にあったのか…。
魏粛は楠の枝葉の隙間からこぼれる太陽の光を見た。
そこにいると自分も紅雀と青雀に会える気がしたのだった。
「雀でも待っているのかな…」
木陰で横になる魏粛に、老人が声をかけた。
魏粛は上半身を起こし、その老人を見た。
「老師はご存知なのですか…。ここの雀を」
魏粛はその老人を見てそう言った。
その老人は不思議な目をしており、魏粛のすべてを見通す様だった。
「そんなところに来るのは雀くらいだろう」
その老人は、魏粛の隣で横になった。
「しかし、お前の会いたい雀は朝にしか現れんよ」
老人はそう言うと声を出して笑った。
「はあ…。そうですか…」
魏粛は再びぼんやりと空を見た。
「しかも赤と青の雀は、誰の前にでも現れる訳ではないのじゃよ。若いの、お主の前には現れる事はあるまい…」
老人は魏粛と同じ様に空を見た。
「そんな事はわかっております。どんな気持ちで我が主人はここで眠ったのかを知りたかったのですよ」
魏粛はそう言って微笑んだ。
「ほう。お主は祭承の家の者か… 」
老人はそう言った。
「我が主人をご存知なのですか」
魏粛は飛び起きて、老人を見た。
「祭承は確かに死ぬ運命だった。しかしここで紅雀と青雀に巡り会ったおかげで、今も生きておる…」
老人も身体を起こし、魏粛に微笑んだ。
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