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次の日の早朝、劉邦は覇上の陣の目前に広がる覇水の流れを眺めていた。
「将軍」
河の畔に立つ、劉邦に声をかけたのは蕭何だった。
蕭何の後ろには張良と曹参がいた。
「おう」
劉邦は腕を組んだまま返事をして、更に堂々と河の畔に立った。
「どうだ張良。俺の運命は今日終わるのか…」
蕭何、張良、曹参は劉邦の横に並んで立ち、同じ様に覇水を眺めた。
「いえ。劉将軍の運命は、こんなところでは終わりません。今日、項王が劉将軍を斬る事は無いでしょう」
そう言って微笑んでいた。
「あの項羽だぞ。俺を斬らない保証はどこにも無いであろう」
劉邦は真っ直ぐに河を見つめたまま淡々と言った。
その劉邦の口調は、今から項羽に斬られるかもしれない男の口調ではなかった。
「劉将軍。今日はすべて項王のためにやったという事を主張して下さい」
張良は劉邦の横に来た。
「すべては項王のためにやった事だという事を主張するのです。項王は判断力に欠ける武人です。必ず劉将軍を斬る事を躊躇うでしょう」
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