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「そうか。項羽はそれで良い。しかし、俺が気になるのは項羽が亜父と慕っている軍師、范増だ。奴の目は、常に俺の命を狙っている気がするのだ…」
張良と蕭何、曹参は顔を見合わせた。
三人が懸念していた事を劉邦も口にしたのだった。
「范増殿は冷酷な人物です。必ず劉将軍を廃しようとしてくる筈です」
「やっぱりそうか…」
劉邦は顔だけを張良たちの方へ向けた。
「范増殿を制する事が出来るのは項王だけです。どうか項王のみに訴えて下さい」
張良はそう言うと頭を下げた。
「劉将軍。もし将軍の身に何かあれば、全員討ち死にの覚悟で控えております。その時は必ず項王の首級…、取らせて頂きます」
曹参は頭を下げてそう言った。
「そんな事をする必要はない。お前らが無駄死にする事はないのだ。もちろん、俺もここで死ぬつもりはないがな…」
そう言うと声を出して笑った。
「さて、そろそろ行くか。地獄の番人がお待ちかねだ」
劉邦は自分の幕舎の方へ颯爽と歩き出した。
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