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二人は幕舎の入口を潜り、中に入る。
中には項羽が座るであろう椅子だけが一つ置かれていた。
会見の場所としては大変失礼なモノだった。
あくまで劉邦は項羽の配下。
これも項羽の軍師、范増の演出なのだろう。
しかし劉邦は躊躇せずに、幕舎の中心部に置かれた椅子の前に平伏した。
「劉将軍…」
「子房…静かにせい。俺に任せておけ…」
劉邦はそう言うと床に頭を付けた。
そしてそのまま劉邦は動かなかった。
張良はその劉邦の後ろに同じ様に座った。
しばらくすると、幕舎の入口から項羽と范増が入ってきた。
その時間は、劉邦と張良には途轍もなく長い時間に感じられた…。
范増は項羽に耳打ちした。
「項王。わかっておられますな…。この劉邦だけは誅しておかねば…」
「くどいぞ、亜父。この男がどれだけの男か、それは儂が儂の目で見極める…」
そう言うと項羽は歩き出し、劉邦の横で立ち止まった。
范増もその項羽と一緒に立ち止まる。
劉邦は生きた心地がしなかった。
その威圧感に身体は硬直し震えていた。
項羽はそれを見て、細い目でニヤリと笑った。
そして劉邦の前に立った。
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