第四章 項羽と劉邦

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「項王…この劉邦。軍律を犯し、この様な事態を招いてしまった事。これは許す事の出来ぬ事実にございます。ご判断を」 控えていた范増の声がその静寂を破った。 劉邦も張良も、その范増の声に焦った。 「大将軍…。すべては大将軍のため、楚のために良かれと思い行った事。それがすべて裏目に出てしまい、この様な誤解を招く結果となりました事、大いに恥ずかしく思います。このままでは武信君項梁様が憎き秦により討ち死にされ、共に涙を流し、敗走した同志として、死ぬに死に切れませぬ…」 劉邦はそう言って顔を上げた。 その劉邦の目からは大粒の涙が溢れていた。 項羽はその劉邦を見て驚いた。 「劉邦…」 項羽はその劉邦をじっと見つめた。 「項王」 范増は今一度そこで項羽に劉邦を誅する様に進言しようとした。 項羽は手を広げて、その范増を制した。
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