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項羽…。
とんでもない餓鬼だ。
このままでは天下を取るどころか、こちらが危ういわ…。
范増は幕舎の外に出た。
「項荘を呼べ」
近くにいた武将に声をかけ命令した。
すぐに項荘はやって来た。
「お呼びでございますか范増殿」
項荘は范増の前で片膝をついた。
范増は微笑んで、項荘の肩に手をやる。
「お主の出番じゃ。剣舞を振舞うが良い」
項荘は項羽の従兄弟にあたる男で、そう地位は高くないが、従兄弟であるという事から、何かと目を掛けられていた。
その上この項荘、項羽の軍では剣舞を舞わせると右に出る者はいなかった。
「はい。承知致しました」
項荘はそう言うと立ち上がった。
手を合わせ范増に一礼したその時、范増は項荘を抱き寄せる様にして、耳元で呟く。
「剣舞を舞う振りをして、劉邦を斬れ」
「しかし…」
「誰も咎めはせん。お主は項王の従兄弟じゃ。項王を危機から救うのも、儂たちの仕事じゃからの…。頼んだぞ…」
范増はそう言うと、足早に幕舎に戻った。
項荘は周囲を見て、今の話を誰にも聞かれていない事を確認した。
そしてひとつ大きく溜息をついて、幕舎の中に駆け込んで行った。
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