第四章 項羽と劉邦

31/53
前へ
/368ページ
次へ
「項王の従兄弟。項荘でござる。今より、楚国の繁栄のために、そして憎き秦を討った祝いとして剣舞を舞わせて頂きます」 項荘は幕舎の入口に立ち、大声で挨拶をした。 「おお、項荘。そなたの剣舞は天下逸品じゃからの。是非頼む」 項羽は手を叩いて喜んだ。 その剣舞は素晴らしく、その場にいたすべての者たちが、項荘の剣捌きに見とれていた。 項荘はどんどん項羽と劉邦の席へ近づき、劉邦の鼻先に剣を振り下ろした。 劉邦は生きた心地がしなかった。 しかし、項荘は再び劉邦の前から離れ、幕舎の中央で再び舞い始める。 張良は、その項荘と腕を組んで剣舞を見ている范増をじっと見つめていた。 確実に劉邦を狙っている。 張良は項荘の剣先を目で追った。 再び、項荘は劉邦の前に立ち、剣を振り下ろそうとした時、その項荘の剣を、張良の剣が受け止めた。 剣と剣が触れ合う音が響き、火花が散った。 その剣を受け止めていなければ、劉邦の頭はその剣に砕かれていただろう。 「おのれ…」 項荘は張良にだけ聞こえる程の小さな声で、そう言う。 張良はその剣で、項荘を弾き飛ばした。
/368ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加