第四章 項羽と劉邦

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「不躾ではございますが、私が剣舞のお相手をさせて頂きます。剣を取り、前線で戦う事は不慣れなれど、剣舞は少々心得がございます故…」 張良はそう言うと剣を項荘に向けて構えた。 そして、項荘と上手く絡み合う様に剣舞を舞った。 その舞いは遥かに項荘のそれを越えて見事だった。 周囲からその張良の剣舞に感嘆の声が漏れる。 「素晴らしい…」 項羽も呆気に取られ、その剣舞を見ている。 その剣舞に焦躁感を抱き、周囲と違う目でそれを見つめていたのは范増ただ一人だった。 その苛立ちは頂点に達し、 「ええい、項荘」 とうとう范増は立ち上がり、劉邦を指さした。 項荘もそれを察し、張良の脇を抜け、劉邦の前へと立った。 「劉邦。項王のためにお命頂戴する」 項荘はそう言うと剣を振り上げた。 「やめんか」 その時、そう叫ぶ声が幕舎の入口から響いた。 そこには劉邦の武将、樊かいが立っていた。
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