第四章 項羽と劉邦

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その樊かいの大きな声に驚き、項荘も剣を止める。 その剣を張良は空かさず、自分の剣ではじき飛ばした。 「何奴じゃ」 「下がれ下郎」 席に座っていた武将たちは剣を抜き、その樊かいに口々に言った。 「うるさい。俺はお前らみたいなカスには用は無い」 そう言って、樊かいは無人の野のごとく幕舎の中を項羽の前まで歩いて行った。 項荘は床に落ちた剣を拾い、樊かいに斬りかかった。 樊かいはその項荘を素手で、振り払う様に押しのけた。 項荘は見事に弾き飛ばされ、范増の卓にぶつかり料理の皿が床に散らばる。 樊かいは勢いよく項羽の前に平伏した。 「項王に申し上げます」 項羽はその一部始終を、盃を持ったまま黙って見ていた。 盃に並々と注がれた酒を微塵も揺らす事も無く…。
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