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魏粛は馬から投げ出された男のところへ走る。
「大丈夫かい」
見た目に異常は無かったが、気を失っていた。
魏粛はその男を抱きかかえ、道の脇に運んだ。
「魏粛殿」
すっかり酔いの醒めた松石は魏粛の元へ足早に戻り、男の顔を覗き込む。
「この男…」
松石はその男を知っている様だった。
「この方が、どなたかご存知なのですか」
魏粛は松石に聞いた。
「ええ。私と同郷ですので…。この方は劉邦殿の軍の武将で、曹無傷殿です」
「そうですか…。では早速私が、覇上の陣までお連れ致しましょう」
魏粛は曹無傷の馬を起こし、その馬の背に乗せた。
そして魏粛は自分も馬に跨った。
「松石殿はお帰り下さい。明日にでも項羽軍はやって参ります。お気を付けて」
そう言うとゆっくりと馬を歩かせ始めた。
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