第一章 紅雀と青雀

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六承の頭には西の町の住人の情報がすべて詰まっている。 姚ばあさんは先週から足が痛いと言っていたので、痛み止めの膏薬を。 琳ばあさんは水あたりを起こしているので、下痢止めを。 といった感じで一人一人に合う薬を桑折に詰めていたのだ。 だから六承は毎日持って出た薬を完全に売り切って帰ってくる。 それを祭傳は知っていた。六承の商いの才能を見抜いていたのだった。 六承は足早に咸陽の街を抜けた。 西の町まで六承の足で約三時間の距離。 町で薬を売って帰ると夜になるだろう。 それも六承は計算していた。 西の町の住人も六承が薬を持ってやって来るのを待っている。 六承は人に愛される商人として既に人々に認められていた。 腰には店で雇っている飯炊きが作った弁当が下がっていた。 このまま行くと、昼時にちょうど西の町に着く。 昼飯時は畑仕事を休んでいる人々のところを回る。 その後は商いを終えた商人の家を回る。 その間に六承は昼飯を食うのだ。 毎日行く町は違うが同じ様に計算して無駄なく行商していた。 「六承。今日は西の町かい」 町外れで畑仕事をする男に声をかけられた。 「ええ。今日は西の町です」 六承も大声で手を振りながらそう答える。 「うちのカミさんが腹の調子が悪いって言っているのだ。また薬を届けてくれ」 「わかりました。今晩にでも届けますよ」 そう言って足早に過ぎて行った。 六承は咸陽の街の人にも好かれていた。
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