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「ありがとうございました」
張良は丁寧に魏粛に頭を下げた。
「この曹無傷は項羽と内通し、劉将軍に二心有りという讒言状を送ったのです」
魏粛は目を見開いた。
「それでは…」
「ええ。この曹無傷を斬首するために我々は探しておったのです」
魏粛はその瞬間から手が震え始めた。
曹無傷を殺す…。
殺すために探していたのか…。
自分が曹無傷を劉邦の元へ運んだばかりに、曹無傷は斬首されてしまうのだ…。
魏粛は後味の悪さを感じた…。
「あなたは確か以前に…」
張良は魏粛の顔を覗き込む様に見た。
「はい。とう城にてお会いいたしました。江南の薬商、祭承の使用人で魏粛と申します」
魏粛は頭を下げた。
「何…。祭承殿の使用人。もしや…」
張良は魏粛の腕を掴んだ。
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