第四章 項羽と劉邦

42/53
30人が本棚に入れています
本棚に追加
/368ページ
「魏粛殿…。もしやそなたは李門殿と共に祭承殿から…」 魏粛の耳元に口を近づけ、小声で聞いた。 「李門をご存知なのですか」 「ええ。江南で一度、お会いしました故」 張良は、頭を下げていた。 「ではあの薬の話も…」 「はい。伺いました」 魏粛は張良と話しながら、横眼で曹無傷を見ていた。 水を掛けられて意識を戻され、縄に繋がれ引き摺られて行った。 この曹無傷…明日には、斬首されるのであろう…。 自分の行動が人の運命を変えた。 たとえその曹無傷が罪を背負っていたとしても。 「いかがですか…」 張良の声が再び耳に入ってきた。 「ええ…」 魏粛は張良にいい加減な返事をした。 「それでは私の幕舎へおいで下さい」 張良は魏粛を自分の幕舎へ招いた。
/368ページ

最初のコメントを投稿しよう!