第四章 項羽と劉邦

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その日、張良と魏粛は遅くまで話をしていた。 始皇帝の話、李門や祭承の話。 そして劉邦の話。 項羽の話。 不思議とこの張良とは馬が合った。 話が弾みそのまま朝を迎えた。 「魏粛殿。如何ですか。我が劉邦将軍の軍に軍医補佐として、加わって頂けませんか」 張良は魏粛に言う。 「私がですか…。しかし…」 「劉邦殿への進言は私がさせて頂きます」 張良は魏粛の手を強く握った。 「この先…、いや、近々行われる論功行賞によっては、まだこの戦乱は終わらない。それどころか、激化します。我が軍も多数の負傷者を出すでしょう。我が劉将軍のために怪我をした兵を、一人でも多く救いたいのです…」 張良が真剣にそう言っているのは、その目を見ればわかった。 魏粛は軍人になる事に抵抗があった。 昨夜の曹無傷の一件も、その原因の一つだと言えよう。 魏粛は目を伏せて、その場で返事をする事が出来なかった。 「ならばこうしましょう。夜が明けて、私が劉将軍に話をします。その後、劉将軍にお会い下さい。その上で決めて下さい」 張良の言葉に魏粛は小さく数回頷いた。
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