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「しかし、あの萬能丹ですが…」
「はい」
魏粛は張良の方を見た。
「宦官の趙高は始皇帝に本当に飲ませたのでしょうか…」
「私には真偽の程はわかりませんが…恐らくは…。それはそうと、李門が始皇帝に献上した萬能丹はこの咸陽にあるのでしょうか…」
魏粛は懐にある自分の持っている萬能丹の袋を無意識に確認した。
「ご心配なく。それに関しては私が保管しております」
張良はそう言って微笑んだ。
「なるほど、その残りの数を数えると、趙高が使ったかどうかわかるのですね」
「そうですね。無闇に使用出来る薬ではありませんので、それで使われたかどうかはわかります。誰に使ったかはまでは、わかりませんが…」
魏粛は表情を曇らせたまま言う。
「そうですね。しかし趙高の性格からいけば、まず始皇帝に飲ませて、薬の効果を確かめる。そのくらいの事はするでしょうね」
「なるほど…。やはり趙高とはそういう男だったのですね…」
「秦帝国を滅亡するまで堕落させたのは、ある意味、趙高かもしれません」
張良はそう言うと目を伏せた。
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