第四章 項羽と劉邦

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「蕭何。秦の章邯は項羽に命じられ、秦軍二十万を助けるために自らの叔父と二人の息子を斬ったという。項羽ほど冷酷な事は俺には出来ん。しかし、この項羽の命じた事は、その後の軍の士気にも影響しただろう。そうは思わないか…」 蕭何は目を伏せて黙っていた。 曹参はゆっくりと劉邦を見た。 そして…、 「その役目、謹んでお受け致します」 そう静かに言い、劉邦を拝した。 「曹参。曹無傷の家族を罰する事は今後もない。しかし、その家族の面倒はお前が見るのだ。いいな…」 劉邦はそう言うと、自分の幕舎へゆっくりと歩いて行った。 その後ろ姿に曹参は、 「承知致しました…」 そう小さな声で呟く様に言った。 その日、曹無傷の処刑は、同族の曹参の手で夜が明けると同時に、執り行われた。 しかしその曹無傷の首は晒される事も無く、丁重に扱われたという。
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