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張良と魏粛は幕舎の中で、劉邦が来るのを待っていた。
「魏粛殿。とう城で劉将軍に会われましたね」
張良は横に並んだ魏粛に聞いた。
「はい。声をかけて頂きました」
魏粛は張良の顔を見る事も無く、真っ直ぐに正面を見据えていた。
魏粛はとう城で劉邦に会った時、この様な機会がやってくる事を感じていた。
「あなたには劉将軍はどう映りますか」
「どう…と、おっしゃいますと…」
魏粛は張良の横顔を見た。
「将軍に天下を取る事が出来るでしょうか」
張良はそう言うと強い視線で魏粛を見た。
「それはどういう事なのでしょう…」
張良は微笑んで顔を伏せた。
「私は、秦が滅んだ後に、楚が再び建つとは思っておりません。その再び訪れる乱世を治めた者が新しい国家を作る。そう考えているのです。もちろん今は、楚の懐王の元にという大義名分は出来ております。しかし、そんなモノは脆いモノです。秦が滅んだ瞬間に…懐王も廃されるでしょう。項羽はそういう男です…」
張良の言葉を、魏粛は瞬きもせず聞いた。
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