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「私は江南の街を出て、色々な人物を見てきました。項羽、英布、彭越、そして劉将軍。それぞれに長けているモノを持っておられます。そして私は思うのです…。秦帝国が滅んだ後、必要な力とは何なのか…。それを考えると、次の時代が必要とするモノを持っている王。そう…王としての器、私はそれが劉将軍にはあると思います」
魏粛は目を閉じて言った。
張良は魏粛を見て微笑んだ。
その時、幕舎の入口で声がした。
「魏粛と言ったな…」
その声に二人は顔を上げた。
幕舎の入口には劉邦が立っていたのだ。
劉邦は足早に入って来て魏粛の前に立った。
そして腕を組んだ。
張良と魏粛は頭を下げた。
「顔を上げよ」
劉邦のその声に、魏粛はゆっくりと頭を上げた。
そして劉邦の目を見た。
「魏粛と申します…」
魏粛は声を小さく震わせながら言った。
劉邦に項羽の様な恐怖に似た威圧感はない。
しかし、この男は一回りも二回りも大きく見える何かを持っている。
魏粛は劉邦に改めてそう感じた。
「俺には王の器があるのか」
劉邦は魏粛の前で胡坐をかき、地面にそのまま座りこんだ。
それを見て、魏粛は自分の椅子を横にずらし、自らも地面に平伏した。
「よい。お主は客人だ。椅子に座られよ」
劉邦はそう言うと、魏粛が横にずらした椅子を、魏粛の前に置いた。
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