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「俺は元々百姓だ。土にまみれて生きてきた。今でも土の匂いが好きでたまらんのだ」
そう言うと、魏粛を覗き込む様に見て笑った。
「俺は、俺の下に集まる人物をすべて受け入れる。俺が正しいと思ってくれる奴は皆、味方だ。お主はどうだ」
劉邦は魏粛の肩を叩いた。
「先程申しておった様に、俺に王の器があるのならば、俺が治める世を見たいと思うか…」
劉邦の声は優しく幕舎に響く。
魏粛はじっと劉邦の顔を見つめ、そしてゆっくりと口を開く。
「民草は…。この数年、戦乱に巻き込まれ、生きる事にのみ必死で、とても幸せと言える様な生活を送っておりません。そして、その前の秦の悪政の時代にも、とても苦しい思いをしてきました…。今、民草が望むのは、血の流れぬ太平の世です。討秦に明け暮れている将軍たちの中に、太平の世を心から望み、そのために戦っている方がどれだけおられますでしょうか…。民草の気持ちは民草にしかわからないモノです…」
「俺も少し前まで、そこにいたからな…。民草の気持ちは良くわかる。俺は民草の血が流れる事が…、一番我慢出来んのだ」
劉邦はそう言うと突然立ち上がった。
「魏粛、 張良、ついて来参れ」
劉邦は足早に幕舎を出て行った。
その後を魏粛と張良も追う様に出て行く。
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