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覇上とは、覇水の畔、その上流にある平原の事をそう呼んだ。
何も無い広い平原で、軍の野営のために、この時代にはよく使われていた。
そこに今、劉邦軍は陣を構えている。
劉邦はその陣の中を颯爽と歩いて行った。
覇水の畔に一人座っている曹参が見えた。
「曹参」
劉邦は歩きながら曹参を大声で呼んだ。
曹参も気づき、座っていた石から立ち上がった。
「将軍…」
劉邦は曹参の前で止まり、曹参の肩を叩いた。
この曹参は今朝早くに、項羽に讒言状を送った曹無傷を斬首したばかりだった。
同族の処刑を曹参にさせた劉邦。
これは曹参のために命じた事だった。
「嫌な思いをさせたな…。すまなかった」
劉邦は曹参に頭を下げた。
「そんな…。将軍。やめて下さい。本来ならば私も罰せられてもおかしくない立場です。それを私のために…」
曹参も察していたのだ。
「お前は沛にいた頃、この俺を何度も助けてくれた。しかし、俺はまだ、そのお前の恩に報いていない」
劉邦は流れる覇水を見て腕を組んだ。
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