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その夜六承は夢を見た。
その夢はとても不思議な夢だった。
六承は祭傳の弟の祭拗と一緒にまだ見ぬ海を見ていた。
その海は赤く渦を巻いていた。
「六承よ。人はこの青い海から生まれたのだよ」
祭拗は六承の肩を掴む様にしてそう言った。
「慶呈先生は土から生まれて土に帰るって…。それに海は青くないよ。真っ赤だよ…」
「何を言っているのだ。お前にはこの空の様に青い海が見えないのか」
「見えないよ。僕には真っ赤に見える。血の様に真っ赤に見えるよ…」
六承は泣きわめく様にそう言う。
祭拗はそんな六承を笑った。
「赤い海なんてある訳ないじゃないか。太古の昔から海は青いのだよ。その海は何よりも深い青なのだよ…」
そう言って腕を組んで海を見ていた。
しかし何度見ても六承にはその海は赤かった。
六承と祭拗の前にある、石の上に二羽の雀が止まった。
一羽は青く、もう一羽は赤い雀だった。
その雀たちはじっと六承を見ていた。
「赤い雀と青い雀だ…」
「六承、雀が赤かったり青かったりする訳ないだろう…」
どんどん祭拗の声は遠ざかり六承から一切の音が無くなっていった。
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