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「良い少年なんだがの…」
「そうか…。もう命が尽きるか…。不憫じゃの」
命が尽きる…。
誰の事だ。
何だ、人が寝ている横で不吉な事を。
六承の耳に再び音が戻ってきた。
それは遠く小さな声だった。
「何とかしてやれんモンかの…」
「それは無理じゃろう」
自分の事を話していると六承は確信した。
六承は思い切って目を開けてみる。
小さな老人が二人、眠っている六承の顔を覗き込んでいた。
「あら、起きたぞ」
「おお、起きたな」
二人の老人たちは同じ様に右手に杖を持ち、一人は赤い羽織、そしてもう一人は青い羽織を着ていた。
「何ですか。人が寝ている傍で…」
そう言って六承は身体を起こした。
すると老人たちは飛ぶ様にして後ずさった。
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