第一章 紅雀と青雀

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「でもな、儂らはお前に授ける様な知恵も無いしの…」 「そうじゃな、知恵もない。じゃが、アレがあるのう」 青い羽織を着た老人が思い出したかの様にそう言った。 「アレか。しかしアレは博打の様なモンじゃろう」 「博打でも死ぬよりはマシじゃろうて」 二人で顔を見合わせてそんな話を始めた。 「そうじゃの。この少年はまだ生きなきゃならん。多分アレにも耐えられるじゃろ」 「儂もそう思う」 そう言うと、赤い羽織を着た老人が懐から革の袋を取り出した。 「これ六承。お前にこれをやろう」 「そうじゃ、これをやろう」 六承は赤い羽織の老人から革袋を受け取った。 「これは何ですか」 六承は両手でしっかりとその袋を持ち、そう聞いた。 「これは『萬能丹』と言うモノじゃ」 「そうじゃ、萬能丹じゃ」 「萬能丹…ですか」 六承は袋を見た。 「お前、薬屋のくせに萬能丹を知らんのか」 「知らんのか」 六承は無意識に座り直した。
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