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「でもな、儂らはお前に授ける様な知恵も無いしの…」
「そうじゃな、知恵もない。じゃが、アレがあるのう」
青い羽織を着た老人が思い出したかの様にそう言った。
「アレか。しかしアレは博打の様なモンじゃろう」
「博打でも死ぬよりはマシじゃろうて」
二人で顔を見合わせてそんな話を始めた。
「そうじゃの。この少年はまだ生きなきゃならん。多分アレにも耐えられるじゃろ」
「儂もそう思う」
そう言うと、赤い羽織を着た老人が懐から革の袋を取り出した。
「これ六承。お前にこれをやろう」
「そうじゃ、これをやろう」
六承は赤い羽織の老人から革袋を受け取った。
「これは何ですか」
六承は両手でしっかりとその袋を持ち、そう聞いた。
「これは『萬能丹』と言うモノじゃ」
「そうじゃ、萬能丹じゃ」
「萬能丹…ですか」
六承は袋を見た。
「お前、薬屋のくせに萬能丹を知らんのか」
「知らんのか」
六承は無意識に座り直した。
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