第一章 紅雀と青雀

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萬能丹…。 聞いた事が無い。 「老師様、申し訳ありません。私の勉強不足です。よろしければどの様な薬なのか教えて頂けますか」 六承は再び頭を下げた。 「ほほほ。知らんで当然じゃ」 「ほほほ。当然じゃ」 二人の老人は顔を皺苦茶にして笑っていた。 「そこまで言うなら教えてやろう」 「そうじゃ、教えてやろう」 老人たちは同時に杖を突いて立ち上がった。 そして二人は六承の周りを飛び跳ね出した。 「萬能丹はの、仙人が作った薬なのじゃ。いわゆる仙人丹じゃ。人が知っている訳は無いんじゃよ。だから恥ずかしがる事は無い」 「そうそう。恥ずかしがる事は無い」 「仙人様の薬…」 六承は驚き、再び袋を見た。 「そうじゃ、仙人の薬じゃ。その薬はどんな病も飲めばたちまち治してしまうのじゃ」 「そうじゃ、何でも治る薬じゃ」 老人たちは六承の周りを止まる事もなく飛び跳ねている。 「それはすごいですね…。そんな薬は今まで見た事も聞いた事も無いです」 「そりゃそうじゃ。仙人の薬じゃからの」 「そうじゃ、仙人の薬じゃからの」 「では、私もこれを飲めば病が治り、まだ生きられるのですね」 六承は少し微笑んで自分の周りを飛び跳ねる二人の老人を見た。
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