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「進行性の胃癌です」
会社の健康診断で「要再検査」の通知を見て、会社を休んで何度か検査を行った。
その検査を受けた大学病院の若い医者は健一に躊躇いも無くそう伝えた。
「え…」
健一は一瞬、耳を疑い、そう聞き返した。
「お気持ちはお察しします」
若い医者はパソコンのモニターを健一の方に向け、レントゲンの映像を健一に見せた。
そして机の上にあったペンを持ち、健一の胃が映ったレントゲン写真を指して説明を始める。
しかし、健一にはそんな話は耳に入らない。
「あ、あの…」
若い医者の説明を遮る様に健一は聞いた。
「後、どのくらい生きられるのですか…」
その声は小さく、力の無い声だった。
「皆さんそうおっしゃいます…」
そう言うと若い医師は座り直した。
「そうですね。持って半年、早ければ三カ月といったところです」
医者は手に持ったペンを机の上に置いて、身体ごと健一の方を向いた。
「もちろん延命治療は行えます。それで半年を十か月、十か月を一年にする事は可能です」
人ごとなのだ…。
健一の命の残量をこの医者は人ごとの様に話しているのだ。
医者という職業はそんなモノなのだろう。
その後、健一はフラフラと病院を出た。
病院に来た時よりも足取りは重く、病院のエントランスの床が粘着質の様なモノで出来ているかと思うほど、足を取られていた。
病院を出ようとした時に健一は肩を叩かれた。
「すみません。あなたのレントゲンと他の人の写真が入れ替わっておりまして…。申し訳ありません。あなたは大丈夫です。癌ではありません」
そう白衣の医者が言うのではないか。
健一はそう思った。
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