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「うん。話そう」
「話せ、話せ」
「お願いします…」
六承は頭を下げた。
「うむ…萬能丹はの、どんな病でも一粒で治してしまう。じゃがのぉ…萬能丹を飲むとな、病にかかっている臓器が治るまで激痛が走るんじゃ。その病の度合いによって痛みの続く時間も強さも違う。その激痛に耐え切った者だけが病を克服して生きる事が出来る。つまりその激痛に耐え切れず死ぬ者もいると言う事じゃ…」
「そう言う事じゃ…」
六承は言葉を失った。
萬能丹を飲めば苦も無く病を治し生きていけると思っていた。
しかし、その前に試練があった。
その試練は死ぬかもしれない程の…。
「つまり死ぬ程の痛みに耐えて初めて病を克服出来るって事なのですか…」
六承はゆっくりと頭を上げた。
「そう言う事じゃ」
「言う事じゃ」
「運が良ければ生きる事が出来るって事かの…」
「事かの…」
「運があるヤツだけが生きる価値があるって事じゃろうな…」
「じゃろうな…」
二人の老人は口々に六承にそう言った。
六承は無言のまま二人の老人を見た。
老人も六承の顔を見て微笑んだ。
「病を治すには一粒で十分じゃ。残りの百七粒はお前が人を助けるのじゃ…。大丈夫。この薬は仙人が作った仙人丹じゃ。何千年ももつ。この人物を助けたい、後世の役に立つと思う人物に使うのじゃ。お前が受け継げ。それも儂らがお前に与える試練じゃ。お前次第で後の世が良くも悪くもなる。頼んだぞ…」
どんどん老人の声は小さくなっていく。
そして六承の目の前は真っ白になった。
それは朝日だったのかもしれない。
六承は目が眩み、その場に倒れた。
その六承の傍から赤い雀と青い雀が飛び立った。
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